本物の紳士はネクタイの柄や素材に合わせて、ネクタイの結び方を変えます。
数種類のネクタイの結び方を覚えることが紳士の嗜みです。
ここで紹介するネクタイの結び方は18種類です。それぞれの特徴を短く紹介していきます。
①フォア・イン・ハンド
②ウィンザー
③ハーフウィンザー
④ダブル・ノット。ヴィクトリア・バリエーション
⑤ダブル・ノット。アルバート・バリエーション
⑥オリエンタル・ノット
⑦ニッキー・ノット
⑧ケルビン・ノット
⑨プラット・ノット
⑩セント・アンドリュー・ノット
⑪バルテュス・ノット
⑫ハノーヴァー・ノット
⑬プラッツバーグ・ノット
⑭グランチェスター・ノット
⑮クリステンセン・ノット
⑯カフェ・ノット
⑰エルドリッジ・ノット
⑱トリニティ・ノット
ネクタイを結ぶとき、ネクタイの向きは「大剣が右(左)」といった決まりはありません。ですが、たいていの結び方は大剣を小剣に巻きつて結ぶので、利き手側が大剣の方が結びやすいと思います。
【フォア・イン・ハンド・ノット】
フォア・イン・ハンドはもっとも基本的なネクタイの結び方のひとつです。【プレーン・ノット】、【シングル・ノット】ともいいます。
・結び目は比較的小さ目です。
・形成される三角形は非対称の樽型です。
・正しく結べばきれいなディンプルが出来上がります。
・ネクタイの生地はミディアム・オンスからヘビー・オンスに最適です。
・比較的かんたんに結び方を覚えられます。
・ビジネスシーンにふさわしい結び方です。
フォア・イン・ハンドの結び方
フォア・イン・ハンドという結び方の名称には興味深い歴史があります。1856年、ロンドンで【フォア・イン・ハンド・ドライビング・クラブ】が創設されました。フォア・イン・ハンドとは4頭立て馬車の愛称です。4頭の馬の手綱を一人の御者が握るのでフォア・イン・ハンド。フォア・イン・ハンド・ドライビング・クラブは、この4頭立て馬車による競争を楽しんでいました。
そして、彼らが好んだクラバット(ネクタイの前身)の結び方としてフォア・イン・ハンドが広く知られることになったのです。ですから、結び方自体はそれ以前からあったことになります。それ以前はセイラー・ノットと呼ばれていました。これは水兵のスカーフの結び方に由来しています。
【ウィンザー・ノット】
名前はウィンザー公爵に由来しますが、ウィンザー公はウィンザー・ノットではなくフォア・イン・ハンドを好みました。結び方を発明したのはウィンザー公の父ジョージ5世であると考えられています。
・スプレッドカラーのシャツに似合う非常に大きな三角形を形成します。
・三角形はシンメトリーです。
・正しく結ばれていると、結び目はしっかりしており、崩れることはありません。
・長めのネクタイを結ぶのに適しています。
・ビジネスシーンでも選択できます。
ウィンザー・ノットの結び方
【ハーフ・ウィンザー・ノット】
ネクタイを結ぶだけであれば、ハーフ・ウィンザーは第一候補です。
名前が示すように、ハーフ・ウィンザーの結び方は、ウィンザー・ノットの短縮形です。
・結び目は中程度の大きさです。
・形成される三角形はほぼシンメトリーです。
・正しく結ぶと、深くて美しいディンプルができます。
・ネクタイの生地はライト・オンスからミディアム・オンスの厚さが最適です。
・ビジネスシーンに適切な結び方です。
・比較的簡単な結び方です。
・スプレッド・カラー、ボタンダウンなどの襟に似合います。
ハーフ・ウィンザーの結び方
ハーフ・ウィンザーは、どこでも着用できるシンプルな結び目です。
このノットが不適切となる唯一の場合は、ネクタイの生地が厚すぎるか、または長さが短すぎる場合です。
ハーフウィンザーは、ウェル・ドレッサーにとって定番の結び方です。フォア・イン・ハンドよりも規則的でしっかりとした結び目になります。ウィンザー・ノットのように長いネクタイを必要とすることもありません。
まだ好みの結び目がない場合は、ハーフ・ウィンザーを基本形にできます。
【ダブル・ノット】
ダブル・ノットはフォア・イン・ハンドの発展形の結び方です。1回巻きのところを2回巻きつけます。
ダブル・ノットには2つのバリエーションがあります。①【ヴィクトリア・ノット】、②【プリンス・アルバート・ノット】です。
・結び目は中程度の大きさです。
・形成される三角形は非対称の樽型です。
・正しく結べば、美しいディンプルができます。
・ネクタイ地はライト・オンスからミディアム・オンスのものが適切です。
・ビジネスシーンでも結べます。
・長すぎるネクタイを調整するために便利です。
①ヴィクトリア・ノット
この結び方はイギリスのヴィクトリア女王の名にちなんで名付けられました。女王がネクタイを身に着けたことはありません。
ヴィクトリア・ノットはフォア・イン・ハンドよりも少し洗練されています。
ヴィクトリア・ノットの結び方
あなたが「リラックスしたスタイル」を目指していて、フォア・イン・ハンドを結ぶにはネクタイが長すぎるのであれば、これは便利な結び目です。
スプレッドカラーやボタンダウンの襟と相性がいいです。
②プリンス・アルバート・ノット
アルバートはヴィクトリア女王の夫で英国議会から唯一「プリンス・コンソート」の称号を認められた人物です。
完成した結び目にはやや特徴があります。2回巻きつけたループが表に見えます。ヴィクトリア・ノットと違い、結び目をほどく時はセルフ・リリースでありません。
プリンス・アルバートの結び方
【オリエンタル・ノット】
オリエンタル・ノットは最もシンプルな結び方です。
・結び目はかなり小さめです。
・ネクタイを裏返した状態で結び始めます。
・長さが短いネクタイでも結べます。
・ニットタイを結ぶのに最適です。
オリエンタル・ノットの結び方
昔ながらの英国人はこの結び方を「Schoolboy Knot」と呼ぶことがあり、大人がスーツ・スタイルで結ぶことは少ないようです。
わたしも小学生のころはオリエンタル・ノットでした。
【ニッキー・ノット】
ニッキー・ノットは比較的短い長さで完成します。ですから、背の高い男性やネクタイが短い方に適した結び方です。
・フォア・イン・ハンドよりも太い結び目です。
・三角形はシンメトリーです。
・ネクタイを裏返した状態で結び始めます。
・ニットタイで結ぶのも選択肢のひとつです。
ニッキー・ノットの結び方
ニッキー・ノットは1920年代にミラノの仕立屋の間で流行した結び方で、ミラノを訪れたソビエト連邦の政治家ニキータ・フルシチョフが好んで結んだことで、【ニッキー・ノット】として知られるようになりました。
わたしは高校生のころ、この結び方が好きでした。イラストはネクタイを裏返していますが、裏返しにしなくても結べます。
【ケルビン・ノット】
ケルビン・ノットはフォア・イン・ハンドに似た小さな結び目です。
・結び目は比較的小さ目です。
・三角形はほぼシンメトリーです。
・細面の人や背の高い人に好まれる結び方です。
・大剣と小剣をともに裏返した状態で結び始めます。
・きつめにしっかりと結ぶため、ライト・オンスのネクタイに適しています。
ケルビン・ノットの結び方
ケルビン・ノットは熱力学の研究でよく知られている19世紀の科学者、ウィリアム・トンプソン(Lord Kelvin)の名前に由来しています。初期の数学的結び目理論へのケルビン卿の貢献に敬意を表して命名されました。
【プラット・ノット】
プラット・ノットはフォーマル/セミフォーマルに最適な結び方です。
・きれいなディンプルが作りやすいです。
・ウィンザーのバリエーションです。
・三角形はシンメトリーで大きさは中くらいです。
・結び目はシンプルなのでヘビー・オンスのネクタイでも結べます。
プラット・ノットの結び方
プラット・ノットという結び方の名前は、元米国商工会議所の従業員であるジェリー・プラット氏に由来しています。この結び目を習ったアメリカのニュース・キャスタードン・シェブリーが広めたので【プラット-シェブリー・ノット】とも呼ばれます。
【ニッキー・ノット】と同じく、1920年台のミラノの仕立屋で使われた結び方といわれています。別名は【ミラノ・ノット】です。
【セント・アンドリュー・ノット】
セント・アンドリューは利便性の高い結び方です。
・結び目はやや大き目です。
・形成される三角形はわずかに非対称です。
・ライト・オンスからミディアム・オンスのネクタイに適しています。
・特に英国で人気がある結び方です。
セント・アンドリューの結び方
【バルテュス・ノット】
バルテュス・ノットの結び方にはたくさんの手順が必要です。
・結び目は非常に大きいです。
・三角形はシンメトリーです。
・カッタウェイなどのスプレッドカラーのシャツが適切です。
・ライト・オンスのネクタイが結びやすいです。
・通常よりも長いネクタイが必要です。
バルテュス・ノットの結び方
バルテュス・ノットは1930年にフランスの画家バルタザール・クロワスキーによって発明されました。
バルタザールは、結び目の下部分がかなり広いことを望みました。緩めに結ぶことがバルテュス・ノットの極意でしょう。
【ハノーヴァー・ノット】
【ハノーヴァー・ノット】という結び方の名称は英国を1714年から1901年にかけて統治したハノーヴァー王朝に由来していると思われますが、その間に君主が実際に結んだという証拠はほとんどありません。
・非常に大きな結び目ができます。
・ほぼ完全な正三角形を形成します。
・三角形はシンメトリーです。
・幅の狭い(細い)ネクタイを使用するのがよいです。
・開きの広いスプレッドカラーのシャツが最適です。
ハノーヴァー・ノットの結び方
完了するまでにはいくつかの手順が必要ですが、ハノーヴァーは特に難しい結び方ではありません。手順のほとんどは、同じパターンの繰り返しです。ハーフウィンザーを結ぶことができれば、ハノーヴァーの結び方を覚えるのに何の問題もありません。
【プラッツバーグ・ノット】
プラッツバーグは街の名前で、この結び方を発明したトーマス・フィンクの故郷です。
・大柄の男性にとって最適な大きな結び目です。
・適切に結べば、シンメトリーの細長い三角形になります。
・綺麗な三角形を保たせる目的で発明されました。
・ビジネスシーンでも適切な結び方です。
・セルフ・リリースの結び目ではありません。
プラッツバーグ・ノットの結び方
他のネクタイの結び方よりも多くの手順を必要とします。できるだけ均等かつ対称性を保つためには細心の注意が必要です。ですが、完成形の美しさには絶対に価値があるでしょう。
【グランチェスター・ノット】
名前の歴史は不明です。ウィンザーに似ていますが、フォア・イン・ハンドの要素を併せ持っています。
・かなり大きな結び目です。
・三角形は非対称です。
・長めのネクタイが必要です。
・適切に結ばれた結び目は美しさを保ちます。
・結び目をやや上向きに傾斜させ、シャツの台襟に収めます。
・カッタウェイのシャツが最適です。
グランチェスター・ノットの結び方
【クリステンセン・ノット】
クリステンセン・ノットは、起源の浅いユニークなネクタイの結び方です。
スウェーデンの通販カタログで初めて使用されました。
【クロス・ノット】とも呼ばれる結び方です。
・正しく結べば、結び目にX字形ができます。
・幅の狭いネクタイを選択してください。
・ビジネスには向きません。
クリステンセン・ノットの結び方
【カフェ・ノット】
カフェ・ノットは、20世紀初期のカフェで好まれた結び方です。
結び目の優しさに注意を引くために発明されました。
・スタイリッシュですが複雑な結び目です。
・三角形はシンメトリーではありません。
・結ぶにはかなりの長さが必要です。
・ビジネスの重大な場面には着用しないでください。
・カフェ・ノットは主にネクタイの小剣を巻きつけて結びます。
・装飾的な目的の結び方です。
カフェ・ノットの結び方
【エルドリッジ・ノット】
エルドリッジ・ノットは、システム管理者のジェフリー・エルドリッジによって考案された結び方です。
・珍しいネクタイの結び目の形です。
・結び目は非対称です。
・ワイド・スプレッドの襟が必要です。
・カジュアルな場面でのみ適しています。
エルドリッジ・ノットの結び方
この結び方を覚えるためには何度か練習が必要かもしれません。劇的な視覚効果を与えるためにのみ着用すべきです。
【トリニティ・ノット】
とても派手な結び目ができる結び方です。
・結び目はかなり大きいです。
・ビジネスシーンにはふさわしくありません。
・生地が厚すぎないネクタイを選択してください。
・ネクタイの幅は狭いものを使用してください。
トリニティ・ノットの結び方
どうしても結びたいと言うのでないかぎりオススメしません。ですが、トリニティ・ノットに深い愛着があるのであれば結構です。
以上、代表的な18種類のネクタイの結び方でした。
気分を変えたいときなどにお試しくださいませ。
ボウタイ専門店DIAMOND HAKE
公式オンラインショップ
コメント